取扱業務

労務問題

労働者が提供する労働力を利用して事業活動を行うために、企業(使用者、事業者)は労働者との間で労働契約を結びます。どういう条件で労働者を使用するかといった契約内容は、基本的には使用者と労働者との間の合意で決定されますが、ただ、労働者は一般的に使用者に比して立場が弱いため、契約自由の原則を修正し、労働基準法などの法令により労働契約で定める労働条件の最低基準が定められています。

以下では、事業主(使用者)と労働者が労働契約を結ぶ際の留意点を簡単にご説明します。

労働者を雇い入れるとき

1 労働契約を結ぶとき

使用者が労働者と労働契約を締結するにあたっては、使用者は労働者に対して、賃金、労働時間などの労働条件を明示しなければなりません。特に以下の項目については、労働者に対してきちんと書面を交付しなければなりません(労働基準法15条)。

  1. (1) 労働契約の期間に関する事項
  2. (2) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  3. (3) 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  4. (4) 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  5. (5) 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

2 就業規則

就業規則とは、使用者が定める職場規律や労働条件に関する規則類のことです。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働者の代表(当該事業場の労働者の過半数で構成された労働組合、そのような労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴いて、所轄労働基準監督署に労働者代表の意見書を添付して届け出ることが義務付けられています(労働基準法89条、90条)。なお、作成時だけでなく変更する場合も同様です。

就業規則に必ず記載しなければならない事項には以下のものがあります(労働基準法89条)。

  1. (1) 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  2. (2) 賃金(臨時の賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. (3) 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
    就業規則の内容は法令や労働協約に反してはならず(労働基準法92条)、また、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所に掲示しまたは備え付けること、書面を交付すること、またはコンピュータを使用した方法によって、労働者に周知させなければなりません(労働基準法106条1項)。

3 各種保険と年金制度

労働者が安心して働けるように、労働者が病気や怪我をしたときなど様々な場面で必要な給付を受けられるようにして、労働者の生活を守ることを目的とした制度があります。そして、法律に基づき、事業主等に保険料等の費用負担が義務づけられています。具体的には、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険といったものが挙げられます。

労働条件に関するルール

1 賃金

賃金とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます(労働基準法11条)。

賃金については、最低賃金法に基づき定められた最低賃金額を下回る金額とすることは法律違反となります(最低賃金法4条)。

また、賃金の支払方法については、賃金が全額確実に労働者に渡るように、以下の4つの原則が定められています(労働基準法24条)。

  1. (1) 通貨払いの原則
  2. (2) 直接払いの原則
  3. (3) 全額払いの原則
  4. (4) 毎月1回以上定期払いの原則

2 労働時間と休憩・休日など

  1. (1) 労働時間

    労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。この労働時間は、労働者が使用者の指揮監督下にある時間をいい、必ずしも実際に作業に従事していることは要しませんので手待ち時間も労働時間ということになります。

    労働時間の長さは法律で制限されており、労働基準法では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定められています(法定労働時間、労働基準法32条)。

  2. (2) 時間外労働・休日労働

    法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、予め労働者の過半数を代表する者又は労働組合との間で、「時間外労働・休日労働に関する協定」(いわゆる「36協定(サブロク協定)」)を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法36条)。

    なお、使用者が労働者に時間外労働をさせた場合には割増賃金を支払わなければなりません。

  3. (3) 休憩・休日

    使用者は1日の労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。なお、休憩時間は自由に利用させなければなりませんので、労働者が電話番をするなどの指示を受けていればそれは休憩時間ではなく労働時間とみなされます。

    また、労働契約において労働義務が免除されている日のことを休日といい、使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません(法定休日、労働基準法35条)。

  4. (4) 年次有給休暇

    使用者は、労働者の雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。そして、その後勤続年数が増える毎に1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます(労働基準法39条)。

    【勤 続 年 数】【年次有給休暇付与日数】
    6か月10日
    1年6か月11日
    2年6か月 12日
    3年6か月14日
    4年6か月16日
    5年6か月18日
    6年6か月以上20日

3 安全衛生及び健康管理

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としており(労働安全衛生法1条)、事業者は、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない責務があります(労働安全衛生法3条)。

4 労働条件の変更

労働者を雇用後、当初定めた賃金や労働時間などの労働条件が変わることもあります。

労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができます(労働契約法8条)。

一方で、就業規則の変更によって労働条件を変更することが広く行われていますが、原則として、使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することができません(労働契約法9条)。例外的に、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは就業規則の変更によって労働条件を変更することができます(労働契約法10条)。

労働関係が終了するとき

  1. 1 合意解約

    合意解約とは、労働者と使用者が合意によって労働契約を将来に向けて解約することです。解雇ではないので、労働基準法上の解雇規制や解雇権濫用法理の規制は受けません。

  2. 2 辞職

    辞職とは、労働者による労働契約の解約です。期間の定めのない雇用契約においては、労働者は2週間の予告期間を置けばいつでも契約を解約できます(民法627条1項)。これに対し、期間の定めのある雇用契約の場合、やむを得ない事由がある場合を除いて契約を解除することはできません(民法628条)。ただし、労働契約の期間は原則3年を超えることはできません(労働基準法14条)。

  3. 3 解雇

    解雇とは、使用者による労働契約の解約です。解雇は労働者に重大な影響を及ぼすことから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、解雇は認められません(労働契約法16条)。

    使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりせんし(労働基準法89条)、合理的な理由があっても、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、原則として、少なくとも30日前に解雇を予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条)。

  4. 4 契約期間満了等による労働契約の終了

    1. (1) 労働契約期間の満了
      労働契約に期間の定めがある場合、期間の満了によって労働契約は終了します。ただし、期間の定めのある契約が繰り返し更新されるなどして、雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は、解雇権濫用の法理が類推され雇止めに合理的理由が求められることもあります。
    2. (2) 定年制
      定年制とは、労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度で、定年に達したときに当然に労働契約が終了します。

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